コラム

クリニック・医院の節税対策1.MS法人と不動産賃貸を活用した節税

はじめに

医師が個人事業主として医院(クリニック)を経営する場合、当然のことですが、利益が多くなると税金も高額になります。そこで、節税を目的として、いわゆる「MS法人」を設立するケースがあります。
しかし、医院とMS法人との間の取引について合理性・妥当性が認められなければ、税務調査で必要経費を否認される(つまり、追加で税金を取られる)ことがあります。特に、MS法人との間で不動産賃貸を行う場合は、節税効果が高いため慎重な検討が必要です。

MS法人とは

「MS法人」とは「Medical Service法人」の略で、医療関係のサービスを行うことを事業目的とした法人の総称です。
具体的な業務としては、診療報酬の請求業務、医院の土地及び建物を賃貸する不動産賃貸業務、医療機器等のリース及び販売、金融機関からの資金調達及び貸付け、などがあります。今回は、医院の建物を賃貸する業務に焦点を当てて説明していきます。

MS法人が営む不動産賃貸の内容

1. 第3者から借りているテナントを個人医院へ転貸

第3者から借りているテナントを個人医院へ転貸

MS法人がテナント所有者と賃貸借契約を結び、さらにMS法人が個人医院へ転貸(又貸し)する形態です。いわゆるサブリース型と呼ばれる形態ですが、MS法人が内装工事などを行うことで、その工事分を上乗せした家賃で医院へ貸し付けることも可能です。

2. 個人医院へ建物を賃貸

個人医院へ建物を賃貸

MS法人が建物を購入・所有し、個人医院へ賃貸する形態です。ただし、家賃の設定時には近隣の相場を考慮する必要があり、税務上は金額の多寡が大きなポイントとなります。

不動産賃貸を営むMS法人を活用した節税事例の検討

1. テナント借主をMS法人へ変更するケース

Aクリニックは、ビルオーナーと直接賃貸借契約を結び、内装工事を行った上で開業しました。順調に所得が増え続けたため、開業4年目にMS法人を設立。テナント借主を医師個人からMS法人へ変更の上、MS法人と転貸借契約を結んでクリニック経営を継続しています。 税務上許容されるMS法人へ支払う家賃の上限は、テナント所有者へ支払う家賃の10%程度と言われています。また、内装工事分の賃料については、内装工事自体がクリニック仕様となっており特殊なため、許容範囲に幅があると見てよいかと思います。

2. 建物をMS法人へ売却し賃貸借契約を締結するケース

B診療所は、建物を医師個人で建てて開業しました。開業後、所得が増え続けたことをふまえ、開業3年目にMS法人を設立。建物をMS法人へ売却の上、MS法人との間で賃貸借契約を結んで診療所経営を継続しています。 この一連のスキームは、節税目的ではありますが、取引を規制する法令が今のところ存在しないため、家賃設定がよほど高額でない限り、税務調査等で指摘される可能性はさほど高くないでしょう。ただし、建物を売却した年の翌々年は必ず消費税課税事業者となるので注意が必要です。

3. 所得圧縮のために家賃を値上げするケース

C医院は開業と同時にMS法人を設立。法人名義で建物を建てた上で医師個人と賃貸借契約を結び開業しました。ここ数年は所得が高止まりしていることをふまえ、開業10年目に家賃を1.5倍まで引き上げることで所得を圧縮しようと試みました。 しかし、大規模なリフォーム工事を実施した、近隣の物件が値上がりした、賃貸借契約締結時に何らかの特約があった、などの合理的な理由があれば別ですが、経年劣化が進んでいる中でただ家賃を引き上げるのでは説明がつかないため、高い確率で税務調査が入り、家賃の増額部分は全額否認されるでしょう。

医療法人との比較

ここまでMS法人に限定して話を進めてきましたが、実のところ、単純に節税効果を比較するのであれば、MS法人よりも医療法人を設立する方がより効果が高いです。
詳しい説明は次の機会にとっておきますが、ここで一点だけ伝えておきたいのは、「医療法人を設立した後は、比較的早い段階で税務調査が入ることを覚悟した方がよい」という点です。
なぜなら、法人化する前の個人所得調査の時効は5年なのですが、法人化してから1年が経過する毎に、税務署が個人事業について調査できる期間が1年ずつ短縮されるからです。節税効果だけを優先して医療法人を設立したことにより、結果的に初回の税務調査が早く訪れた事例も見受けられます。

まとめ

このように、不動産賃貸だけを例にとっても、MS法人を活用した節税方法が複数あります。 節税を目的としてお知り合いや顧問税理士からMS法人の設立を薦められることもあるかと思いますが、MS法人化については以下に掲げるメリットとデメリットを理解した上で検討する必要があります。
「仙台 医院・クリニック経営サポート」はMS法人化に関する知見が豊富ですので是非ご相談ください。以上、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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